どのくらい遠いのか、どのくらい時間がかかるのかは分からない。
それでもカメはぼつぼつと歩いていた。
すると、後からウサギが同じ道を歩きはじめた。
ウサギは器用にスイスイと進み、ついにはカメを追い越してしまった。
カメは焦った。
ウサギと比較した途端、今までの自分の遅い歩みが気になりはじめた。
カメは懸命に足をバタつかせ、息を切らしながらウサギに追いつこうとした。
しかし、ウサギは尚も軽やかにぐんぐん先を進んでいく。
もはやカメは息も絶え絶えになっていた。
その時、神様が現れて言った。
「お前は何をしているのか。お前はカメであろう。
カメならばカメらしく歩めば良いのだ。
カメにはカメにしか見えないものがあり、カメにしか体験できないものがあるのだ。
自分がカメであることを恥じる必要はない。
ただ歩みの速さだけを比べて何になる。
お前は先のことを考えず、ただ一歩一歩、自分のペースで歩めばよいのだ。
足の速さだけを比べれば、お前より速い者はいくらでもいる。
いずれ私の所に辿り着くだろうが、その時には、土産話を沢山聞かせておくれ。
私はお前だけの土産話を楽しみにしているのだよ」
カメはハッとして我に帰った。
「そうだ。私は私のペースで歩けばいいのだ。
自分がカメであることを恥じる必要はないし、足の速さであろうと何であろうと、他と比べる必要はないのだ。
私は私だけの土産話を集めながら、神様の所に歩いていこう」
それからというもの、カメは誰に追い抜かれても、少しも気にならなくなった。
そしてカメは自分だけの土産話を神様に聞かせてあげた。神様はたいそう喜んだそうな。
昔も今も、世に競争原理などは無い。
他と比較して、少しでも上に行こう、先に行こうと競争したがる者達がいるだけだ。
カメのように遅くとも、気にせず「ゆるり」と歩むべし。





